罪滅ぼしの野菜と友情の余熱

罪滅ぼしの野菜アイキャッチ エッセイ

🍽 ビストロ・パ・マルとフランス料理図鑑

読書の秋、皆さんはどんな本をお読みでしょうか。

私は〈ビストロ・パ・マル〉シリーズにハマってしまい、「タルト・タタンの夢」「ヴァン・ショーをあなたに」「マカロンはマカロン」を読み進めていきました。
数年前に西島秀俊さん主演でドラマ化された『シェフは名探偵』の原作です。

夫の仕事柄、家にはフランス料理の本がたくさんありますが、ページをめくっても何のことやらさっぱりで、自分で作れる気がしませんでした。
〈ビストロ・パ・マル〉シリーズは物語なので読みやすく、わからない料理用語は、フランス料理図鑑で調べながら読むのもまた楽しいものです。

フランス料理図鑑は、オールカラーの絵本のようなかわいらしい図鑑で、〈ビストロ・パ・マル〉の物語性と合わせると、スッとフランス料理が心に入ってくるような感じがしました。

カスレ、ベッコフ、フロマージュなど、食べてみたいものがたくさんできました。
世の中にはこんな魅力的な料理があるのもだなという新しい出会いもあります。

🍎 タルトタタンとベッコフ鍋の余熱

タルトタタンというお菓子、ご存じですか?

リンゴの季節になると食べたくなる人も多いと思います。
タルトタタンは、タタン姉妹の失敗作だったそうです。 失敗して偶然できたおいしいものだったとは、なんとも味わい深い。

ベッコフ鍋は、肉や野菜を白ワインでマリネして一晩おき、パン生地で蓋をして翌朝パン屋さんに預ける。 パンを焼いた後の余熱で蒸し焼きにした鍋を持ち帰り、家で食べるというもの。

余熱をみんなの生活の楽しみのために使うパン屋さんの思いやりが、美しいと思いました。

チーズやワインも種類がたくさんあって、命が尽きるまで少しずつ食べていきたいと思いました。

※ベッコフ鍋はお花やコウノトリの絵が描かれた色鮮やかな美しい鍋です。
フランスのアルザス地方に行くとお土産として売られているそうです。                                                                       

🍷「ヴィンテージワインと友情」に潜む構造

「マカロンはマカロン」の最後のお話、「ヴィンテージワインと友情」は、ネタバレしないようにざっと書くと、みんなを喜ばせようと良かれと思ってやったことが、逆に相手の都合のいいように利用されてしまうという話です。

そして、利用されていることに気づかず、特定の相手に嫌われているのではと疑念を抱きます。

実際にはその相手こそ、自分が利用されていることに違和感を持ってくれているのに、それに気づかず避けようとしてしまう。

これは料理の話にとどまらず、日常のいたるところに似たような構造が潜んでいる気がします。

きっと皆さんの身近でも一度や二度は同じようなことがあったと思います。

人は、自分に対してよりソフトな人を“いい人”と思ってしまう。

恨むべき人を恨まず、助けてくれる人を憎んでしまうこと、結構あると思います。

🧅 罪滅ぼしの野菜と職場の構造

この物語を読んだ後、ふと以前勤めていた会社のことを思い出しました。

私のいた部署で一番若くてかわいい女性、☆彡さん。彼女には上司●さんの計らいにより、仕事が与えられませんでした。
私は彼女に仕事を与えるようお願いしましたが、聞き入れてもらえませんでした。
理由は☆彡さんの異動を考えているからとのこと。

私が持っている仕事を彼女に振り分けたところ、納期が間に合わなそうだったのでせかしたことがありました。間に合わせないと今後も仕事が与えられないだろうと思ったのです。

しかし☆彡さんに、「○○さん(私のこと)は自分の仕事がはかどらないとすぐそうやってせかすけど、こっちにも都合があります。」と言われてしまいました。

どうも☆彡さん、ときどき会社の駐車場で●さんから畑で採れた野菜をいただいていたようです。
同僚★さんが目撃し、「自分はもらったことがない。えこひいきみたいで面白くない」と言っていました。

私も野菜作りが好きで、年度の初めに土づくりの話を●さんにしたところ、「うちは耕すけど土づくりはしない」と言っていました。
そのせいか、職場の冷蔵庫に入れられた●さんの野菜は、ちょっと貫禄が足りない気がしました。

土づくりをしないのは、罪滅ぼしに使う野菜だからでしょうか。

★さん、それはもらわないほうが幸せな野菜だよ…と心の中で思いましたが、口には出しませんでした。

ほどなくして、☆彡さんは●さんの思惑通り異動になりました。

🍉 スイカと昇進のすれ違い

毎年昇進をほのめかされるものの、結局昇進しない私。
理由はうすうすわかっていました。

「今回は見送りました~」と●さんより一つ上の上司に言われて数日後、●さんからラインがありました。畑で小玉スイカがとれたのでくださるとのこと。うちの近所まで来ているから出てこないかと言われました。

胸の中がモヤモヤして、とても受け取る気にはなれず、それなのに休みの日に化粧をして出ていくのも面倒で、お断りしました。

『上司が気にかけて野菜を持ってきてやっているのに常識がない』と噂されるのは予想がつきますが、どうしても受け取りたくなかったのです。

やがて★さんが●さんと折が合わず異動。

私も異動を願い出て、●さんの上の上の上司と面談した時、「毎年昇進の話は出るのに結局しない。それなら最初から別の人を立てればいいのではないですか?」と伝えました。

すると、「●さんから自分から辞退したと報告が来ています」とのこと。

やっぱり、あれは罪滅ぼしのスイカだったのです。

皆さんは、誰かの“罪滅ぼし”に巻き込まれたことはありますか?
皆さんなら、罪滅ぼしの野菜を受け取りますか?

🧊「自滅」という言葉の違和感

そういえば、以前別の部署の先輩が直属の上司に「どうしたらそんなにスピード出世できたのですか?」と聞いたところ、

「俺は何もしていない。周りが自滅していっただけ」と言われたことがあるそうです。

自滅――?

自滅という言葉、どう感じますか?

それも、人によっては別の見方があるかもしれないなと思いながら、そっとその職場を離れたのでした。

📚 次回は、同じく〈ビストロ・パ・マル〉シリーズの「間の悪いスフレ」を読んでみます。

ふわっと膨らんで、しぼんでしまう“間の悪さ”について。スフレのような人間関係、探ってみます。

最近のコメント